2016年9月7日。大学病院からの紹介状を持って重粒子線治療ができる施設へ。これで4つ目の病院。まだ治療は何も出来ていません。
朝9時過ぎに到着。自宅から車で1時間ほど。調べてみたら2022年現在でも日本に重粒子線治療ができる施設は6つしかありません。泊まりがけで通院する人もいるとの事。近くにあったのはとてもラッキーな事のようでした。
初診の受付をタケさんがしている間、私は椅子に座って辺りをぼんやり見ていました。
人は何人もいるのだけれどゴミゴミしている感じは無く、ここは病院なんだろうか?なんだか静かで不思議な空気感。
年配の方が多いのだけれど、若い方もいて、タケさんは明らかに「若い方」の方。
ここにいる人はみんな癌なのだろうか?
ここにいる人は350万円出せるお金持ちか、保険にちゃんと入っている方なのだろうな。
診察室で名前を呼ばれて中へ。
先に診察をさせてくださいねと診察用の椅子にタケさんは座って、私は横で見ていました。
グイグイ鼻の中へ器具が!そんなに奥まで⁈タケさんクシャミ大連発。涙ポロポロ。(ヒエーーーマジですか?私は絶対無理ー)
先生はすごい。くしゃみ大連発で猛烈に鼻水やよだれが先生にかかっても動じる様子は無い。
「ごめんなさいね〜もうちょっと我慢してくださいね〜」と言いながら遠慮なくグイグイとです。驚きです。
もう一度待合室で待機。
タケさん「危ねえ危ねえ、危うく殴りそうになったわ(笑)」って。
再度呼ばれた時、椅子にこれから担当医になる先生、後ろにもう1人先生が立っていました。
説明文書と書かれたA4の用紙10枚もある資料を手渡され、それに沿って担当医が説明をしてくれました。
重粒子線治療の担当医からの説明
説明資料にはざっとですがこんな事が書かれていました。
タケさんの病気の状態
診断名…左上顎洞癌
病期・病態・組織型など…cTaN0M0 stage4A 腺様嚢胞癌
治療の目的・必要性
病気自体は手術可能だが、術後の審美性/機能性に大きな変化をきたす。また、通常の放射線療法や化学療法、その併用療法では上顎洞腺様嚢胞癌を制御する事は困難である。
重粒子線治療とは
重粒子線治療とはどんな治療かの説明
治療の流れ
治療の流れの説明。
重粒子線照射は、1日1回、2週に6〜8回、合計16回、総線量64Gy(RBE))(1回線量4Gy(RBE))
治療で期待される有効性
腺様嚢胞癌に対する重粒子線治療で治療した部位が治る可能性は70%〜80%程度と報告されている。(個人差がある)
一般的な有害反応
重粒子線を当てる事によってどの部位にどんな反応が出てるか、短期的長期的に細かく記載(ここの部分だけで3ページ半)
何も治療を行わなかった場合に予想される経過
現症状の増悪や視力障害、頭痛、顔貌の変形などが出現すると予想される。また病変の増大、遠隔転移が出現する可能性があり、いずれは生命に影響を与える。
重粒子線治療の医療制度と費用
重粒子線治療は先進医療であり、公的健康保険が適用されない。費用は一括314万円で全額自己負担。
先進医療費以外の診察、検査、投薬、入院費等の費用については健康保険による一般の保健診察と同様に扱われる。
※これは2016年の事。現在はタケさんと同じ状態であれば保険適用になっています。※
タケさんの決断
説明書を担当医が読み上げる中、私が不安に押しつぶされそうになったのは有害反応の所だった。
3ページ半に渡ってどんな障害が出るか延々と事細かに書いてあって、担当医はそこに書いてある事の中でタケさんに必ず出るであろう障害、半年後・1年後・それ以降には高確率で出るであろう障害、もしかしたら出るであろう障害を説明してくれた。
短期的…皮膚の日焼け、口腔・鼻・咽喉頭の炎症、眼球結膜炎等、放射線脳炎、外耳炎・中耳炎・内耳炎、口渇・味覚変化・口内乾燥…
中長期的…粘膜潰瘍、骨髄炎・骨壊死・腐骨、失明を含む視機能の低下、嚥下障害、嗅覚障害、眼瞼下垂、顔面の痺れ、味覚障害、嚥下障害…
特にタケさんは左上顎洞壊死と左視力障害、聴覚障害には注意が必要。
こんなにあれこれ障害が起こる可能性があると言われるとやっぱり怖くなる。
そしてもう一つ不安だったのは治療費の事。
重粒子線治療として314万円。それプラス診察代・入院費・検査費・投薬費。いったい合計いくらかかるのだろう。
ひと通り、担当医の説明が終わって、こちらからの質問をした後、重粒子線治療をやるかどうかの返事をしなきゃいけなかったんだけれど、タケさんはすぐに返事はしなかった。
「ちょっと2人で話し合いたいので、またすぐ戻ってきてもいいですか?」
入り口近くのロビーの椅子でタケさんは「にょろちゃんはどう思う?」と私に聞いてきました。
お金なら何とでもなる。治療するのはタケさんだから、タケさんの決めたことに従うと私は言いました。
「治る可能性があるのなら重粒子線治療をやりたい」
またすぐ診察室に戻って、治療をお願いしたいと話しました。
癌発覚から半月、病院4つ目。癌治療を始める最初の一歩にようやく辿り着きました。
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