最後の家族旅行/終末期のこと[15]

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上顎洞癌(腺様嚢胞癌)の再発・脳転移で在宅緩和ケアに移行した夫タケさん。

『元職場の先輩が宮司をしている神社で祈祷をしてもらう』という夢を叶える為に、家族で神社へ。車で片道2時間の小旅行です。

出発日4日前に昏睡状態になって一度は諦めたこの旅行。

訪問医から万が一体調を崩した時のために…と書いてもらった手紙をお守りに、訪問医と訪問看護師の万全の連携のもとで2021年12月初旬のこの日、家を出発しました。

目次

心配していたこと

①慣れない7人乗りのミニバンを運転すること

体力が無くなって寝てばかりのタケさんの為に、事情を知った日頃お世話になっている車屋さんが7人乗りのミニバンの試乗車を貸してくれると言ってくださり、その厚意に甘える事にしました。

心配なのは普段軽自動車しか運転した事が無いまだ若葉マークの次男ゴボさんが運転できるのか?

決行日の数日前に1時間ほど試乗させてもらって、とりまわしや駐車、車線変更など、車の感覚を確認させてもらいました。

②両目が見えないタケさんが慣れない車で乗り降りできるのか?

目が見えないというのはものすごく不安なこと。今まで10年以上も暮らしてきた家の中でさえ歩くのが不安で家族の介助が必要な状態です。

玄関で靴を履く

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玄関から階段を降りて駐車場まで歩く。

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車に乗り込むのに入り口の手すりをつかむ。足を上げる。

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乗り込んで座席に座る。

帰りはその逆。

それも試乗車を事前に借りて練習しました。

恐怖心を抱えた大きな男性を目的通りに言葉と介助で動いてもらうのは想像以上に大変で、そして重労働。

大変な重労働だけれども『やってやれない事はない』のを確認しました。

③神社の本殿に続く長い階段

本殿に続く30段ほどの階段。これが一番の難関。

本殿まで行くには、スロープは無くて、階段のみ。

タケさんが乗った車椅子を3人で担いで階段を上がれるか?家の前の3段の階段で練習してみたけれど、重くてとても無理だと諦めました。

悩んだけれど、タケさんが頑張って歩くと言ったので、片手は手すり、片手は息子に肩を貸してもらって、後ろからも押しながら歩いて登る作戦にしました。

涙涙の家族旅行

当日は明け方まで大雨。予報通り出発時刻には雨が上がりました。

支度と車への乗り込みに時間がかかって予定より1時間遅れで出発。

タケさんの座席はフルフラットにして、肌掛けの布団を敷いた上に横になってもらって、掛け布団も掛けていつでも眠れる状態にして出発しました。

タケさんはそれはそれは上機嫌。仲良しさんからプレゼントされた上着を着て車の中でもウキウキと大声で歌を歌って冗談を言って私達を笑わせて…

30分そんな調子だったけれどウトウトし始めたらそれからは到着までずっと寝たままでした。

嬉しいサプライズ

神社にもうじき着くという頃タケさんを起こしました。なかなか目覚めなかったけれど、なんとか到着までには起きてくれました。

神社の入り口に一番近い駐車場を空けておいてくれたので階段の目の前に車を停めることができました。

車椅子を下ろそうとトランクを開けた頃、見知らぬおじさん達が「こんにちはー」と言いながら車に近付いてきて車椅子を下ろしてくれました。

神社の人かな?

と思って御礼を言った瞬間、気が付きました。

元職場の先輩後輩達です。この日は平日だったのに、知らせを聞いて5人も集まってくれていました。

私も同じ職場だったので全員知り合い。

私が驚いて大きな声で先輩の名前を口にしたもんだからタケさんも気付いて先輩の名前を言いながら泣いていました。

「俺、目が見えないから名前言ってよ」ってタケさんが言って

それから一人一人握手をしながら名前を聞いて驚いて、ありがとうと御礼を言いながら泣きました。

念願を果たした神社での祈祷

それから歩いて登るはずだった階段をみんなで車椅子ごと担いで本殿まで上げてくれて、

みんなが見守る中、宮司の先輩から祈祷をしてもらいました。

祈祷してもらっている間中タケさんはずっと泣いていました。

神社でみんなで写真を撮って、家族だけでも撮って、タケさんを囲んで先輩後輩達とも撮って…

それから待合で他愛のないおしゃべりに花を咲かせて、まあよく皆んな笑ってました。

息子達は知らないおじさま達に囲まれて居心地悪そうでしたが(笑)お父さんにはこんなに良い友達がいるのだと感じたと思います。

帰りは車に乗り込む所まで手伝ってくれて、タケさんは別れを惜しむようにギリギリまで皆に話しかけていました。

こうして嬉し涙連続の、涙涙の家族旅行は終わりました。

帰路の途中で訪問看護師の田中さんに神社で皆で撮った写真を添付して神社での出来事と体調の無事を伝えました。

その日のうちに訪問医にもケアマネさんにもその写真が行き渡り、良かったね、良かったね、と自分ごとのように喜んでくれたのが嬉しかったですね。

これが家族4人で行く最後の旅行になりました。

この日の事を思い出すと、たくさんの人に支えられて助けられた感謝と、タケさんの嬉し涙とその笑顔を思い出して、大変な1日だったのだけれど、温かい幸せに包まれる、そんな気持ちになります。

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