訪問看護師との出会い②/終末期のこと[10]

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余命宣告された夫タケさんを自宅で看取るため、訪問医と訪問看護師にお世話になることにしました。

以前の訪問看護師に嫌な思いをした経験を思い出してしまって、なるべく先延ばしにしたい気分になった事で、「明日お邪魔したい」という電話を「もう少し延期してほしい」とお願いしました。

その先延ばしした期間に右目の見え辛さを感じるようになり、訪問看護師さんが初回に訪問してくれた時には全くと言っていいほど見えなくなっていました。

両目が見えない不安に押し潰されそうな日々。

『あと⚪︎日で看護師さんが来る』…と指折り数えるように待ち望んだ初回訪問でした。

目次

諦めかけた夫の夢

余命宣告されてからあれこれやりたい事、やらなきゃいけない事に急いで着手していたタケさん。

やりたい事、いや、『叶えたい夢』と言っても良いのではないかと思われるほどやりたかった事。

それは友人の宮司さんに祈祷してもらう事

私達夫婦が働いていた会社でお世話になった先輩。後に家業を継いで宮司となった神社に一度行ってみたいとずっと言っていたタケさん。

余命宣告を受け、その神社に家族で行こうと決めて、日程調整。

せっかくだから近くの宿に一泊しようと、予約もしていたのだけれど、左目だけでなく右目も見えなくなったことで、さすがに出かけるのは無理だと判断して神社に行くことも宿の予約もキャンセルしていました。

訪問看護師、初回訪問の日

待ち望んだ初回訪問日、看護師さんは男女2人でやってきました。

男性看護師さんは所長さん。女性の看護師さんは補佐といった感じ。

この後この看護師さん達は頻繁に話題に上がるので名前をつけておきましょう。(お2人とも仮名です)

男性は『田中さん』、女性は『吉永さん』にしようかな。

「〇〇さーん(タケさん)、初めまして〜」と田中さんの元気な声。

自己紹介もほどほどに見えていた右目も見えなくなって不安な日々を過ごしていた旨の話をすると

「訪問日を待たずに電話してくれて良かったのに〜」

と明るい声。

色々タケさんに質問しながら血圧を測って酸素飽和度を測って…

それから今の病状、困ってる事、不安な事…

タケさんの身体に触れながら

うんうんと頷きながら、

相槌をうちながら、

じっくりじっくり時間をかけてタケさんの話を聴いてくれました。

訪問看護師さんの行動力

じっくり話を聴いてくれた事で、神社の祈祷を諦めたことをタケさんが話した時でした。

「いいじゃないですか、行きましょうよ。

私達が全力でサポートしますから大丈夫ですよ。

その夢叶えましょうよ」

と言った田中さん。

すぐにケアマネさんに電話して、「こうこうこういう訳で…」とタケさんの夢の内容を説明し…

ケアマネさんが自宅に来てくれて、

知り合いにタクシー運転手がいるから送迎してくれないか相談してみると言ってくれて即電話。

タクシー運転手さん、事情を聞いてボランティアで送迎してくれると言ってくれて…

その後、訪問医に電話。体調が急変した時に備えて書類を揃えてもらう準備を了承してくれて。

あれよあれよと諦めていた夢がもう一度実現できそうな夢に。

タケさんの表情が一気に明るくなったのを感じました。

生きる希望?夢?そんなものを貰った。そんな感じ。

両目が見えなくなって初めての明るいニュースに嬉しくて浮き足立って、やる気だってアップしちゃう。

そんな感じ。

突然箒に乗って舞い降りてきた魔法使いです。

(その後何度も田中さんの魔法に助けられる事になります)

訪問看護師/家族だけに話したこと

タケさんに夢の魔法をかけた田中さん。

じっくりタケさんと話をした後、その後を吉永さんに託して、

私に『契約書類を書いてもらうのに説明が必要だ』と言ってタケさんの部屋を出て私と2人でリビングへ。

契約書類をひと通り書いた後、田中さんは私にこんな話をしました。

・残念ながらご主人は残された命はそんなに長くない状態にあると訪問医からの申し送りで聞いています

・これからの時間はご主人の苦痛をできる限り取り除きながら、最期の時をご家族で過ごす時間になります

・『亡くなっていくご主人をどんな過程でどんな選択をし、どう看取るか』納得して選択する、それがご主人が亡くなった後も生きていかなければならないご家族の心の支えになるんです

私は頷きながら話を聴いて、泣きたくなるのを堪えていました。

そんな話をした後田中さんは

『点滴で栄養補給をする最期はお勧めしない』と言いました。

看取り時、点滴での栄養投与をお勧めしない理由

点滴での栄養補給をお勧めしない理由は…

亡くなる前はそもそも水分栄養などを吸収できる状態には無い

そこに点滴で水分栄養が体内に入っていくと分解できず身体に蓄えられていく状態になる。

そうすると痰が出たり腹水が溜まったり身体が浮腫んでくる

とのこと。

点滴投与されて亡くなる患者さんは身体が浮腫み、とても苦しそうな顔で亡くなっていくけれど、それをしない患者さんは段々水分が抜けて見た目はガリガリになっていくのだけれど、苦痛を伴わずだんだんと眠る時間が増えていき、最期は穏やかな顔で亡くなっていくんです

…と。

なかなか理解し辛い話ではあったけれど、だからこそ強烈に私の中にインプットされた話でした。

夫の希望を聞いてきた訪問看護師

そんな話をしているうちに吉永さんがタケさんとの話を終えて田中さんと私のいるリビングにやってきました。

そこで吉永さんはこんなことを私に話してくれました。

ご主人と色々話をしました。

ご主人に「今してほしい事は何ですか?」と尋ねたら

奥様と一緒に過ごしたいと言っていました。

「仕事を辞めてなんて言い出しづらくて言えなかったけれど、そばにいてほしい。」と言っていましたのでお伝えしておきますね。

それを聞いた瞬間に涙が溢れ出てきました。人前なのに止まらなくて…

タケさんの癌が分かって大泣きした日、タケさんは私に「泣かないで欲しい」と言いました。

そこから泣く時は1人で。1人でたくさん泣いてきました。

我慢できずタケさんや息子達の前で泣く事は何度かあったけれど、人前で泣く事なんてなかったのに止められませんでした。

泣いて泣いて泣いて。それを見守ってくれたお2人。

これが訪問看護師と私達夫婦の出会い

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